コラム

関西技術系職種の今の転職市場を解説【2023年5月】

売り手市場と呼ばれている今の雇用市場ですが、実際、製造業、特に技術系職種の市場はどのようになっているのでしょうか?

今回は、技術系職種で起こっている売り手市場の状況について、最新の雇用統計レポートを見ながらどのような特徴があるのかを解説します。

 


民間企業の統計からみる最新の転職市場情報

人材サービス会社大手のパーソル社「転職求人倍率レポート(2023年3月)」によると、メーカーの求人倍率は2.51倍(前月比+0.01倍)IT・通信業界では6.20倍(前月比+0.19倍)となっています。

活況な転職市場

その中でも、技術系職種(上記レポート内では”エンジニア”)を見てみると、

  • エンジニア(機械・電気)の求人倍率は4.16倍(前月比-0.02倍)
  • エンジニア(IT・通信)は10.33倍(前月比+0.13倍)

となっており、技術系職種になるとさらに数字は跳ね上がります。同じように人手不足が深刻化している専門職(建設・不動産)の倍率が4.38倍。いかに技術職の転職市場が活況を呈しているかが伝わってくるものと思います。

求人企業・求職者の属性(民間企業の統計レポート)

なお、パーソル社のレポートは、同社がサービス提供をする転職サービス「doda」の会員登録者をベースに算出しています。dodaに求人掲載をしている企業は、一定の費用をかけて求人サービスを利用したいと考える会社が多くなります。

そのため、この調査においては、有名企業、比較的規模の大きな会社、国内外に拠点を複数展開している会社などが多い傾向があります。求職者についても、離職者よりも在職者、年齢層は20〜40代が多くなる傾向が出ます。

公的機関の統計から見る、最新の転職市場情報

一方、関西で技術系職種の統計情報を公開している大阪、兵庫、京都、滋賀の各労働局の調査によると、技術系職種の有効求人倍率は次のようになっています。

【職種】

  • 開発技術者:開発、設計職種
  • 製造技術者:生産技術、製造技術職
  • 情報処理/通信技術:プログラマー、システムエンジニア職種

 


「カンサポウェビナー|レポートで見る、技術系、製造系の雇用情勢」より


大阪

  • 開発技術者 2.45倍(求人数1351件、求職者数552名)
  • 製造技術者 0.86倍(求人数1143件、求職者数1329名)
  • 情報処理/通信技術者 2.64倍(求人数7390件、求職者数2799名)

兵庫

  • 開発技術者 1.63倍(求人数616件、求職者数378名)
  • 製造技術者 0.52倍(求人数444件、求職者数855名)
  • 情報処理/通信技術者 0.67倍(求人数764件、求職者数1132名)

京都

  • 開発技術者 2.19倍(求人数363件、求職者数166名)
  • 製造技術者 1.15倍(求人数341件、求職者数296名)
  • 情報処理/通信技術者 0.80倍(求人数456件、求職者数571名)

滋賀

  • 開発技術者 1.24倍(求人数119件、求職者数96名)
  • 製造技術者 0.52倍(求人数95件、求職者数182名)
  • 情報処理/通信技術者 0.81倍(求人数211件、求職者数259名)

※参照

大阪「大阪労働局|2023年3月求人・求職バランスシート
兵庫「兵庫労働局|労働市場月報ひょうご令和5年3月内容
京都「京都労働局|求人・求職バランスシート(令和5年3月分)
滋賀「滋賀労働局|職業別常用【有効】(求人倍率・求人・求職状況)令和5年3月

技術系職種のいま

バブル期を超え、未曽有の売り手市場とも言われていた2018年の有効求人倍率が1.61倍。その視点で見ると、滋賀を除く大阪、兵庫、京都では、開発技術者の売り手市場が顕著であることがうかがえます。

一方、製造技術者の倍率は、京都が1.15倍である以外は、全て1倍未満と極めて低調。開発技術者とは対照的となっています。また、情報処理/通信技術者については、大阪でのみ2.64倍と需給がひっ迫。求人ニーズが大阪に一極集中している状況が出ています。

製造系職種はどうなっているのか?

では、製造系職種についてはどうなっているのか?こちらは、「生産工程の職業」という区分で、各労働局から次の統計データが公表されています。

 


https://4510.omoroiworks.com/project_kmsp/kmspevents/20230508-13804/

「カンサポウェビナー|レポートで見る、技術系、製造系の雇用情勢」より


  • 大阪:2.06倍(求人数12769件、求職者数6193名)
  • 兵庫:1.78倍(求人数7719件、求職者数4343名)
  • 京都:1.92倍(求人数3652件、求職者数1906名)
  • 滋賀:1.38倍(求人数3747件、求職者数2721名)

滋賀がやや低いものの、大阪、兵庫、京都では活況を呈しており、製造現場で人不足になっている状況が見えてきます。技術者の中でも、製造技術者のニーズは低い一方、製造の担い手自体は人手が足りず、人材が必要である状況がうかがえます。

求人企業・求職者の属性(公的機関の統計レポート)

労働局のレポートは、各府県のハローワーク(公共職業安定所)の登録情報をベースに算出しています。

ハローワークへの求人掲載は無料でできるため、できるだけコストを抑えて採用活動をしたいと考える企業が多くなります。また、ハローワークは地元密着の運営を行っていることから、地元の中小零細企業とのコネクションがあります。そのため、ハローワークには地元の中小零細企業の求人が多く集まる傾向があります。

また、ハローワークは失業者が利用する所でもあるため、求職者の中には離職者も多く、年齢層も10代~70代まで幅広く登録しています。

投資意欲は旺盛

総じて、企業の技術系職種に対する採用意欲は旺盛。新製品、新技術開発、IoT化推進のため、開発、設計、ITエンジニア職種の採用を進めていることがうかがえます。生産自体も好調で、その分、生産の担い手不足が顕著になっている状況も伝わってきます。

一方、製造技術系の募集は開発系とは対照的。製造ラインの改善・強化よりは新規開発に企業は投資をしたい意図が感じられます。

大阪一極集中

関西には日本を代表するメーカーが数多くありながら、技術系職種の求人は大阪に一番集中している状況があります。特にIT人材については、以前、経済産業省から2030年に最大79万のIT人材が不足するというレポートが公開されるくらい不足感があるのにもかかわらず、その実態は大阪一極集中。大阪以外ではむしろ求職者の余剰が目立っています。

これは、システム、IT系の様々な情報が大阪に集中しており、必然的にIT系の開発案件、プロジェクトが大阪で数多く発生し、求人募集も大阪で出てくる、という状況があると考えられます。技術者の立場からすると、確かに売り手市場であることは事実。しかし、大阪以外での勤務を希望する求職者の中には、自分の希望に合う求人がないと悩んでいる人も一定数以上いることも考えられます。

  • 「カンサポウェビナー|レポートで見る、技術系、製造系の雇用情勢【関西エリア中小企業】」でも詳しく解説しています。

まとめ

関西で技術系職種で転職をする際、できるだけ多くの会社に応募したい、多くの選択肢を検討したい場合は大阪で仕事を探すとよいと思います。しかし、現在の住まいや家庭事情などから、大阪勤務ができない方も多くいるでしょう。

その場合は、限られた選択肢の中から、社風、製品の強み、技術力、仕事内容など十分にリサーチをしていき、1社1社の応募を大事にしていくという進め方も必要になると思います。

 

制作協力:オモシゴジャーナル編集部

 

 

おすすめ求人情報

その他のコラム記事

まずはあなたの希望する働き方・ライフスタイルを第一に考えます。
すぐに転職をお考えでなく、転職しようか迷っているという方もぜひご利用ください!

  1. HOME
  2. コラム
  3. 技術者の転職
  4. 関西技術系職種の今の転職市場を解説【2023年5月】